“甘いものは人を笑顔にする”ショコラを通じて世の中に感動を提供 「マサール」古谷健さん
夢を語り、若々しく仕事に打ち込む父親 人生の役割を問い、継いだ家業
――北海道に戻って、お父さまの会社に入ったきっかけは?
「父が『新しいチョコレートを作りたい』『あそこのシェフをヘッドハンティングして、もっとおいしいチョコレートを作れる』と、喜々として夢を語ることがありました。当時、60歳を超えていたと思います。やる気に満ちて、若々しく仕事をするのは、うらやましく、自分に与えられた人生の役割を自問自答し、会社を引き継ぐのはDNAというか、自分に与えられた役割と考えて決断しました」
――お父さまに伝えたときの反応はどうでしたか。
「父は心の中は大喜びしていたと思いますが、『そうか、頑張ろう』って(冷静に)言い、(こちらも)『うん、一緒にやろう』という感じでしたね」
道内産の良質な乳製品と、厳選したカカオで最高の味を―と原点回帰
――一念発起しての転身ですね。
「電通から菓子屋ではギャップがあり、パリと兵庫と福岡の有名繁盛店で“武者修行”をして戻りました。電通で蓄えた経験と、各地の有名店での経験。一気に花を咲かせようと意気込んで2012年に戻ったら、会社は財務的に会社はちょっと傾いている状況。財務状況を立て直すとともに、二つの大きなテーマを設けました。一つは原点回帰。北海道の良質な乳製品と、世界中から選りすぐったカカオを使えば、本場ヨーロッパに引けを取らないショコラができるという創業の志があり、原点に戻ることにしました」
――自分が蓄えてきた経験より、創業の原点を尊重したわけですね。
「もう一つが使命感の確立です。ショコラを通じ、世の中に感動を提供する使命を明文化しました。社員が何のために会社に来て働くかを明確にしたことで会社がギュッと一つにまとまり、みんなの目線が一つの方向に向きました」
――会社を継がれたきっかけは?
「戻って3年目に父が急逝し、私が代表に就きました。非常にショックでしたが、3年間、父と濃密な時間を過ごし、父の思い、仕事の進め方、経営のスキルはしっかり学ばせていただいたと感謝しています」
――社長就任後に取り組まれたことは?
「曽祖父、祖父が築き上げたウインターキャラメルです。父は2010年ごろから外部に委託製造し販売しましたが、委託先が倒産し休売の状態でした。古谷製菓のルーツである看板商品は、一族を代表する商品として復刻販売したいと思いました。(キャラメルソースを)煮詰める時間、温度など、具体的な作り方が分かりませんでしたが、たまたまマサールのカフェに見えた古谷製菓のOB、OGのみなさんに教えていただき、当時の味を再現して販売することができました」