「本当に危ない」道路埋め尽くす観光客に住民ため息…畑侵入され怒る農家も―北海道美瑛町の“オーバーツーリズム”
好機と考える動きも 観光客と農家の共存模索
靴底から病害虫や病原菌が持ち込まれると、作物を作れなくなる恐れがある。一方で、観光によって美瑛の名前が広く知れ渡るチャンスだとも捉えている。
「はっきり言って迷惑の方が多いが、文句ばかり言っていてもポジティブな未来にはつながらない」
農家と観光客がウィンウィンの関係を築こうと、大西さんは2019年、若手農家ら10人で「ブラウマンの空庭。」というプロジェクトを立ち上げた。
畑に設置している「ブラウマンの空庭。」の看板
農家の歴史や視点を紹介するため、畑に看板を設置した。顔写真を掲載し、QRコードをスマートフォンなどで読み込むと、作物を購入するホームページにアクセスできるようにした。大西さんは意気込む。
「美瑛の農作物のブランド価値を高め、ファンを増やし、農家と観光客が共存していく美瑛モデルを構築していきたい」
「青い池」泳ぐ外国人も 経費投入しカメラで監視
騒動は冬に限ったことではない。去年7月、アップル社の壁紙にも採用された世界的景勝地「白金青い池」で撮影された動画が物議を醸す。
外国人男性がコバルトブルーの池で泳ぎ、笑顔でピースサインを決める。頭上にはドローンが飛んでいた。
「ジャポンという音がなったので振り返ると人が泳いでいる状態。木を登ろうとしたり押したりしている」(撮影した観光客)
水深が深く、エキノコックスへの感染も考えられることから、池に入ることを禁止している。
「池で泳いでいる人を見たという報告や、池が凍って雪が降り積もり、足跡が無数に残っているという事例の報告は受けている。非常に危険な行為」(美瑛町商工観光交流課 成瀬弘記課長補佐)
町は対策に乗り出した。AI搭載カメラで池を監視することにした。人が侵入すると、写真で記録し、スピーカーから日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語で警告する。白金青い池を含め、4台設置した。
経費は20万円ほど。警告音が流れることで、奥まで侵入することはほぼなくなり、本来業務の観光案内に集中できるようになった。町は今後、8台のカメラを増設する計画だ。