「本当に危ない」道路埋め尽くす観光客に住民ため息…畑侵入され怒る農家も―北海道美瑛町の“オーバーツーリズム”
行政サービスの質低下も懸念 観光税導入を検討
美瑛町はオーバーツーリズム対策費をまかなうため、観光税の検討を始めた。早ければ2026年から導入する。白金青い池の駐車料金に上乗せする「駐車場利用税」と「宿泊税」で、年3~4億円の税収を見込んでいる。北海道では初めてだ。
「町民サービスのために使われるべき経費から対策やインフラの整備の費用が支出されている。このままでは町民への行政サービスの水準が低下する懸念も。観光客にも協力してもらうことが必要」(美瑛町商工観光交流課・成瀬弘記課長補佐)
⑰美瑛の宿泊客わずか 「泊まってお金落として」
美瑛町の周辺には「北海道第2の都市」の旭川市や「第2のニセコ」と呼ばれ、注目されている富良野市がある。町や観光協会の調べによると、美瑛町への宿泊客はわずか6.6%の16万人。
「たくさんの観光客が来ることは大歓迎。泊まってお金を落としてほしい。宿泊につながるよう青い池や道の駅のライトアップを実施してきたが、今後も滞在時間を伸ばしていくための取り組みを行っていきたい」(成瀬課長補佐)
住民生活の維持と集客の両立という難しい問題がこれからも続く。
編集後記
「これはひどい」。思わずわたしも声が上ずった。去年12月下旬、オーバーツーリズムの取材で訪れた北海道美瑛町。「クリスマスツリーの木」の前の道路は人や三脚が道路を占拠し、まるで歩行者天国のような状態だった。
取材クルーとともに、車で通り抜けようと試みた。観光客らは除けようともしない。「邪魔くさいな」と言わんばかりのまなざしで、車内のわたしたちの顔をのぞく。住民にとっては腹立たしいだろうと思った。
コロナ禍で冷え込んだ観光がV字回復をしている。宿泊する観光客が少ない美瑛町にとって、地元に多大な恩恵があると言いがたい。むしろ、外から害虫被害をもたらすリスクにさらされ、農家が怒りを抱くのも当然だ。
ただ、それでも農家の大西さんは、美瑛の名前が知れ渡ることはチャンスと捉えていた。彼が描くのは「美瑛モデル」。観光客との共存を願う取り組みをわたしも報道で後押ししていきたい。
※この記事は北海道ニュースUHBとYahoo!ニュースとの共同連携企画です。オーバーツーリズムの危機に直面する北海道観光の現状を追いました。