“津別から世界へ”職人技と先端技術が融合する木工ファクトリー 「山上木工」山上裕一朗さん #BOSSTALK
日本代表の誇りを持って作った東京五輪・パラリンピックのメダルケース
――採用されたときのお気持ちはどうでしたか。
「間違いなく通らないと思っていたので、その瞬間は最高にうれしかった。メダルは団体競技では選手や控え選手、コーチ陣にも配られるので、計5400個作りました。普段の仕事と一緒にやるので、スタッフは本当に苦労しました。ぼくも寝ないで仕事をしたこともありますが、会社の全員が日本代表として戦っている感覚でした」
――そのとき、お父さまは?
「まだ若く、甘えていた部分もあって、困りごとで親父に相談すると、ワンポイントで助けてくれました。今、思うと、任せてみようと思ったのかもしれません」
――社長に就かれ、どういうことに力を入れていますか。
「カラマツの圧縮木材の家具への活用です。道内で圧倒的に多い材料のカラマツ、トドマツを、多くのメーカーさんは家具に利用していません。建材などに使うのも大事ですが、見方を変えて挑戦しました。北大と林産試験場さんと共同研究しており、製品化の直前です」
――針葉樹で家具を作る北海道への利点は?
「広葉樹の価格が高騰しています。針葉樹は地元に豊富にあり、安く、コスト面で優位性がある。広葉樹の乾燥には2年かかるのに、カラマツは1カ月で済み、大きなメリットです。地元の材料を活用したいという自治体さんがあれば、そのスキームに完全に乗るビジネスになります。ぼくたちだけでは北海道の針葉樹の活用拡大という課題解決はできないので、今、仲間を募っています」
技術を世界に発信し、未来を切り開く 同じ志を持つ仲間と地域を盛り上げたい
――ボスとしては大事にされていることは?
「親父は堅い感じの職人で、怖いという感覚が多少、あったと思います。その雰囲気を変えたくて、社長交代の日、社長でなく『裕一朗』『裕君『裕さん』と呼ぶよう伝えました。みんなちゃんとそう呼んでくれ、社内の風通しが良くなると思います」
――北海道で、津別で、この会社を経営される未来を、どう描いていますか。
「キャッチフレーズがあります。『津別から世界へ』。津別というブランドにこだわり、自社の商品や地元の環境を武器にしながら全国、世界への発信に挑戦していきたい。併せて、同じ志を持つ仲間と一緒に地元を盛り上げたいと強く思います」