二人“らしい”世界に一つだけのウエディングをプロデュース 「COCOSTYLE」荒井さやかさん #BOSSTALK
クオリティを求め、生じたスタッフとの心の溝 「あなたにはついていけない」
――その後、何かがやってくるわけですか
「2 、3年たって、仕事がパンクするのです。いっぱい仕事を受注できるのはいいのですけども、自分でこなしきれなくなって。ちっちゃいミスが続いてしまったのです。見積もりを間違うとか、資料に誤字脱字があるとか、お客様にその日のうちに連絡ができないとか。それで『よし、アシスタントを入れよう』と、2人をチームに入れたのですけれども、続かなくて、すぐに辞めてしまったのですよ」
――なぜですか。
「『あなたにはついていけない』と言われました。今、思うと、お客様に届けたいサービスのクオリティがあって、絶対こういう結婚式を作りたいとか、こういうふうに幸せになってほしいって思いがあったのです。スタッフにもやっぱり心がありますよね。やりたくないこともあれば、自分だったら、こういうふうにやりたいなとか、モヤモヤすることもあったと思うのですね。(こちらは)『いやいや、関係ないから、仕事だから。お客様が求めているし、最高品質でいきたいからやって』と、仕事を頼んでいたと思うのです」
結婚式場にランウェイ モデルショーをイメージし華やかに演出
――ぐいぐい行っていたものから挫折も経験して、作ったウェディングは具体的にはどういったものがあったのですか。
「スタッフが離れて、私自身も第1子を出産しまして、そのころ、ウエディングプランナーはもういいかなって、ちょっと思って。そんな中で、すごく大きなお仕事をいただいて。お嫁さんの方、新婦さんの方がモデルをしていらっしゃって。モデルの大会に一緒に美容師さんとタッグを組んで出ていたことがあって。で、やっぱり今の自分があるのも、モデルの仕事があるから。それを、ぜひ結婚式の中で表現して差し上げたいと思って、思い切って会場内にドーンとランウェイを作りました」
「本当はこう生きたかったのだ」 挫折を経験し、見つけた本来の自分
――すごいですね。盛り上がりましたか。
「盛り上がったというより、息をのんでいましたね。会場中が引き込まれる感じで。ランウェイをバーッと(照らし)、その場でヘアカットのショーをして、30秒ぐらいでパッと着替えて、すぐ入ってくるので、空気がぐっと動いたなっていう実感がありますね。終わったときに、すごくうれしかったことがあって。独立してから、ずっと一緒に働いている大道具のスタッフの方が『おかえり』って言ってくれて。その『おかえり』っていう言葉がすごくうれしくて。私、かえってきたのだ。私は本来はこっちだったんだなって、思い返す機会になって。離れたスタッフは自分の気持ちに正直になれなくて心を殺して(仕事を)やっていた。私も心を殺す数年間があって。でも殺しちゃいけない、自分の気持ちにうそをついちゃいけないと思って。本当にやりたい仕事、本当に届けたい価値を貫いた先に見えたものは、私はこう生きたかったのだなって。今度は一緒に働く人にしてあげなきゃいけない。私がこうやって自分を取り戻したように、みんなにも、ちゃんと取り戻せるような、自分ってこう生きていきたいのだって実感できる会社を作りたいと、そのとき、決めました」
――会社はフルリモートで経営されているってうかがいました。ウエディングの仕事ってフルリモートでできるのか、疑問なのですけど。
「実はウエディングプランナーの仕事って9割が事務仕事です。発注し、書類をまとめ、コンセプトを考え、本当に準備9割、本番1割っていう仕事なので、フルリモートができるところはありますね」
――普段の打ち合わせも全部、リモートでやるってことですか。
「うちは北海道全域を対象にしているので、そもそも会場で打ち合わせするのはちょっと難しくて。リモートにお客様も抵抗感がないです」