“北海道が誇る食文化ジンギスカン”伝統を守り進化を続ける「マツオ」松尾吉洋さん #BOSSTALK
お客さんに喜んでもらえば利益は自然とついてくる 利益の地域還元を重視
――社長に就任されたのは、どういうタイミングでしたか?
父が亡くなった後、3代目の社長を叔父が務めてくれました。2014年、叔父が65歳、私は40歳になる節目に就任しました。
――社長になって、心境の変化や新しく感じたことはありましたか?
社長就任するにあたっての考えという冊子を作りました。その核となるのが三方よしという考え方、みなさんもご存知かと思います。創業者の祖父の考え方に金と女は追うなというのがあります。女を追うなというのは分かりませんが、金を追うなというのは、こういう商売でなんぼもうかるかは考えるな、お客さんに喜んでもらえるサービスや味を提供すれば、自然と利益はついてくるという考え方です。もう一つ特徴的なのは「謝恩」という言葉をよく使っていたことです。地元の子どもに喜んでもらえる松尾ジンギスカン謝恩大盆踊り大会や、期間限定で本当に安く市民の方に提供する「謝恩いただきますフェスタ」みたいなものなど、利益を地域のみなさんに還元するとして、謝恩という言葉を使っていました。祖父は三方よしを知っていたかどうかは分かりませんが、金と女は追うな、まずお客さんに喜んでいただけ、そうすれば自然と利益が出る。これは買い手よし、それによって売り手よし、また謝恩で利益を地域に還元していくという考え方。まさに大事にして孫に伝えたのは三方よしの思いです。それで社長就任するにあたって、理念として掲げたのです。
給食にジンギスカンを無償提供 「夏休み前の思い出」づくりに貢献
――今、力を入れている取り組みは?
観光のお客さまも大事ですし、東京にも出店しており、そのお客さまもちろん重要ですが、従業員に常々言っているのは、松尾ジンギスカンは観光客が食うものだよね―となってはやはりだめだと思うのです。地元で親しまれるジンギスカンであり続け、そのベースがあっての道外出店や観光だと思います。この味付きジンギスカン、北海道で生まれた食文化を次の世代に伝えていきたいです。そんな中で創業の地である滝川を含めた中空地区5市5町の中学校に松尾ジンギスカンの給食の日として、ジンギスカンを無償提供させていただいています。昨年は約6000人分、1トンを提供しました。夏休みが始まる直前ぐらいに松尾ジンギスカンの給食の日を設定してもらい、松尾ジンギスカンの給食を終わったら、夏休みが来たなと、長く記憶に残るような原体験にしてほしいですね。給食の間にDVDを使い、この空知、中空知を中心に味付きのジンギスカン文化が生まれた歴史的な経緯など、そういう知識も含めて語り継いでいこうと、勉強していただく機会を作っています。