事務局スケッチブック
文学を探偵デュパンみたいに読むならば
UHB大学5月最後の講演は北大大学院の竹内康浩教授。愛知県出身だが11歳まで美幌や恵庭で育ったほぼ道産子とのことだ。
東大文学部を卒業後いくつかの大学で教鞭をとり、10年前に北大に赴任。現在西洋文学講座をお持ちである。
本日のテーマはタイトルからして面白い。
当初のテーマは「文学を平べったく読む」だったが「文学を探偵デュパンみたいに読むならば」に変更となった。
デュパンとはエドガー・アラン・ポー作の名探偵のこと。ちなみにポーは探偵小説を一番初めに書いた作家とされ、コナン・ドイル作のシャーロック・ホームズもその影響を受けたそうだ。日本でも江戸川乱歩は名前をもじってつけている。
さてデュパンは難事件が起こると警察に捜査協力をお願いされるのだが、警察批判もする。
「警察は近くから見るせいで間違える。真理は掘ってもダメで山のてっぺん。常に表面的なもの。表面をよく見なさい」デュパンの鉄則は深読みをしないことである。
そのデュパンの事件解決として「モルグ街の殺人」は三つの謎をあげている。
事件は4階の部屋で母娘が殺害された。しかし犯人は
1、金を盗んでいない 2、部屋に鍵は掛かっていた 3、叫び声は外国語?
当然警察の常識(思い込み)では犯人は人間。我々が無意識で持っている常識のせいで真相が見えなくなるというのだ。
なんと犯人はサルかオラウータン。聞けば納得はできる。デュパンの推理は「深読みをせず、平べったく観察し、関係を発見する」
ポーの書いたこの作品が世界最初の探偵小説とされ、その後の原型を作り出したと言われている。
竹内教授のまとめは
・平べったく読む(関係を発見すること)
・答えから読まない(主人公は答えがない問題に向き合い続けている)
・繰り返しを見逃さない(一見無意味でもそれが鍵に違いない)
・読者自身が切実な問題を持っていること。なぜなら文学は切実な問題(死、時間、罪)であふれているから。
皆さんの感想はどうだろうか。
文学は勿論だが日常生活でも「人の話を自分の思い込みで決めつけない」「繰り返しには何か意味がある」は大事なことかもしれない。
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