【札幌公演】“バレエ×舞踏×歌舞伎”異色の融合―熊川哲也率いるKバレエ・トウキョウと東急文化村が立ち上げた“Kバレエ・オプト”の新作『踊る。遠野物語』_麿赤兒が"命がけ"で舞う
バレエと舞踏の化学反応「摩訶不思議な舞台になればいい」
――バレエと舞踏を融合させた新たな芸術表現に挑戦されます。
森山 一概にバレエはこうだから、舞踏はこうだからと固定化した掛け合わせではない表現を目指したいです。
バレエは西洋の芸術として生まれましたが、今や日本人ダンサーも多く活躍しています。
日本人ならではの内省的な部分や地面に対しての感覚。そうした感性を持ったバレエダンサーが舞踏家の身体と出会うとどうなるのか、楽しみですね。
僕はどこか、バレエと舞踏の中間にいるかもしれない。一人ひとり違う身体の感性を持っていると思うので、稽古の中で皆さんと遠野物語を語り合いながらアプローチしていきたいです。僕も「河童」役で踊ります。
麿 土方巽(麿さんが師事した秋田市出身の舞踏家)は、秋田の農作業や寒さに耐える暮らしの中に着想を得て舞踏を創始しました。
舞踏は生活に根付いていて、バレエはイメージに根付いているという感じがします。
今回、遠野という広がりのある主題の中で、ある意味何でもできます。飛ぶ人がいれば、這いずり回る人もいるでしょう。飛びたい人を引っ張る何か、という怖さがあってもいいかもしれない。身体というのは不思議なものです。摩訶不思議な舞台になればいいのかなと思いますね。
82歳のレジェンド「舞台で死んじゃうかもしれないワクワク」
――これから稽古を重ねて作品を仕上げていく。意気込みをお聞かせください。
森山 遠野物語を読み込みながら、心に感じたものをしっかりと前に押し出していくことを大事にしたいです。
遠野物語に記された、言葉では説明できないようなさまざまな体験を実感として観客に届けること。踊りはそれができる力を持っていると思うので、「感じる身体」というのを作品の中で伝えていきたいです。
麿 遠野物語を解釈するのではなく、現代人がどう肌身に感じるか。そういう挑戦でもあると思うんです。AI(人工知能)を頼れば、解釈や意味的なものは作るかもしれないけれど、肌の感覚というものは絶対に得られない。
何がリアルで、何が幻想なのか、その狭間の不思議な世界をどこまで表現できるか。僕はもう82歳です。舞台で死んじゃうかもしれないというワクワク感もありますよ。
遠野物語は「死」も一つのテーマとして内包しています。そういう意味では当たり役になるんじゃないかな。命がけで楽しみたいですね。
記者:千葉園子(あきた芸術劇場ミルハス)

















