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「夏 楽しむこと最優先」ウクライナ侵攻に無関心なモスクワ市民…"非友好国"に指定された日本人半減『細るコミュニティー』

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情報統制の成果? それとも地域性? 夏を楽しみ“戦争に無関心”なモスクワ市民

レストランのテラス席でディナーを楽しむモスクワ市民。軍事侵攻の最中、戦争とはかけ離れた“日常”を楽しんでいる(2023年6月)

レストランのテラス席でディナーを楽しむモスクワ市民。軍事侵攻の最中、戦争とはかけ離れた“日常”を楽しんでいる(2023年6月)

 情報統制の成果なのか、それともモスクワの地域性なのか…。大半の市民はウクライナへの侵攻に無関心だ。ロシアの内政と社会情勢に詳しい日本の研究者は匿名を条件にこう説明する。

「ロシアでは、政権批判は拘束につながる。正義感を出したところで世の中は変わらないし、目先の利益(自分の生活)を優先する人が多いため、夏を謳歌(おうか)するしかない」

 モスクワは冬の日照時間が1日1時間もない日があるが、夏のピークは午後10時を過ぎても日が沈まない。目抜き通りの飲食店は、いたるところにテラスを設ける。マチ全体が浮かれているように見える。

 「冬は真っ暗なのよ。私たちは、私たちの暮らしを楽しんでる。戦争なんて関係ないわよ。今、楽しまないで、いつ楽しむのよ」

会社員の30代の女性は、ウクライナに近いロシア南部でつくられた赤ワインをグラスに注ぎ、飲み干した。

ロシア ”非友好国”に指定…日本企業が相次ぎ撤退「在留邦人は半分以下」

モスクワのショッピングモールにあった「ユニクロ」。市民に人気だったが営業を停止した(2022年3月)

モスクワのショッピングモールにあった「ユニクロ」。市民に人気だったが営業を停止した(2022年3月)

 「ウラジーミル」「シンゾー」。安倍元首相とプーチン大統領がファーストネームで呼び合ったのは、今は昔。西側に歩調を合わせる日本をロシアは「非友好国」に指定した。

 冷えた両国関係や経済制裁に加え、国際送金が困難になったせいもある。日本で作ったクレジットカードが使えず、手元の現金が頼みの綱になっている人もいる。衣料品店「ユニクロ」をはじめ、日本企業の撤退も相次いでいる。

 「軍事侵攻前の2021年はロシアに2200人の日本人がいましたが、2022年は1320人。今では900人で、2年前の半分以下です」(日本政府関係者)

 モスクワの人口は東京とほぼ同じ1300万人。元々、日本人は珍しいが、今ではレアキャラ扱い。タクシーに乗ると「一緒に写真を撮ろう」とせがまれたこともある。

モスクワ日本人学校は1/4まで減少…教室に先生がいない「このままだと運営困難に」

かるた作りの授業でカメラの前に立って作品を見せる小学生(2023年1月)

かるた作りの授業でカメラの前に立って作品を見せる小学生(2023年1月)

 日本人コミュニティーの象徴とも言えるモスクワ日本人学校も小さくなる一方だ。児童・生徒数は侵攻前の112人から8割減少し、いまや27人。校長と教頭をのぞき、日本から派遣されていた13人の教員はロシアの侵攻直後から全員退避していて、教室に先生がいない。

 1月、小学1年生の国語の授業のひとこまを取材した。日本なら35人は入る広さの教室に、小さい児童2人しかいないのは異様だった。 担任の女性教員が日本からオンラインで、児童2人にかるたづくりを指導する。

「そろそろスピードアップしないと、かるた大会に間に合いませんよ」(教員)
「先生、(2人だけで)読むのと取るのを全部つくるのは大変だよ」(児童)

 授業は和やかに進み、子どもたちはできあがったかるたをカメラに向けていた。1人は、入学以来、一度も直接あったことがない担任に素朴な疑問をぶつけたことがある。「先生はいつモスクワに戻ってくるの?」。教員は答えに窮し、「分かりません…」と言葉を詰まらせたという。


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