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「夏 楽しむこと最優先」ウクライナ侵攻に無関心なモスクワ市民…"非友好国"に指定された日本人半減『細るコミュニティー』

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ドローンが突っ込んだモスクワ・シティのビル(2023年8月)

ドローンが突っ込んだモスクワ・シティのビル(2023年8月)

 「被害を受けたビルには政府機関が入居していたが、ウクライナ政府の攻撃は今回も失敗した」。一夜明けても国営のテレビや通信社は同じニュースをループする。午前9時、現場に入ると、やじ馬の市民がたくさんいた。

 高さ173メートル、42階の建てのビルを見上げる。ドローンが突っ込んだのは中層の21階。ミラーガラスの壁面にハーモニカの吹き口が浮かんだようだ。市民らはこの吹き口を自撮りの画角に入れようと必死だった。

「プリゴジンの乱」でモスクワ戦火に? 空路は軒並み売り切れ…1000キロ超の陸路検討

ワグネルの創設者、プリゴジン氏。SNSに動画を再三アップし、ロシア国防相や軍制服組トップの参謀総長を名指しで批判した(ワグネルのSNS、2023年5月)

ワグネルの創設者、プリゴジン氏。SNSに動画を再三アップし、ロシア国防相や軍制服組トップの参謀総長を名指しで批判した(ワグネルのSNS、2023年5月)

 モスクワは6月23日夜、脅威にさらされた。ウクライナで戦闘に参加していた民間軍事会社「ワグネル」が反乱を起こし、ロシアに向けて進軍したためだ。

 「ロシア軍上層部がもたらす悪を止め、正義を回復すると決めた。抵抗する者は破壊する。これは軍事クーデターではなく、正義の行進だ」

 ワグネルのトップ、プリゴジン氏がSNSで音声のみの声明を発表した。パソコンのスピーカーから飛び出てきそうな大声で、がなりたてる。

「これは本気度が違います。声に本当の怒りを感じます。今まではロシア国防省への脅しパフォーマンスだったかもしれないが、今回は本当に進軍するかもしれない」

20年以上支局でコーディネーターとして働くロシア人スタッフの声がこわばっていた。

モスクワ南部の道路に連なって待機するトラック。ワグネルの進軍に備えた(2023年6月)

モスクワ南部の道路に連なって待機するトラック。ワグネルの進軍に備えた(2023年6月)

 モスクワでの戦闘も想定される。「家族の退避を考えなければならないね。日本でなくてもいい。とにかくロシアを脱出する方法を見つけて」。日本の上司からも指示があり、妻や中学3年生と小学6年生の二人の子どもの帰国便を探した。

 ウクライナ侵攻で、日本への直行便はなくなった。カタール、UAE、トルコ、中国を中心に、空の便を調べるが、チケットは売り切れていた。

 家族はモスクワに残りたいと言っている。「マチはいつも通りで騒ぎになってない。今すぐ逃げる必要性を感じない。ママ友もみんな退避しないよ」。スーパーで買い物にしていた妻の危機感はゼロ…。

 「まずいな。いずれにしてもロシアが国境を封鎖し、行き場を失う前になんとかしなければ」。フィンランドやバルト三国など1000キロ以上もある陸路も検討した。

 そのころ、モスクワ南部の道路には大きなトラックが数えきれないほど列をなした。「ワグネルの北上を食い止めるために配備されたものだった」。取材から戻ったカメラマンが、ほほを紅潮させていた。

 直接、日系企業の駐在員に片っ端から確認したところ、様子見。あっという間に時間は過ぎ、気づけば24日夜、反乱は収束した。恐れていたロシア軍との戦闘も一部にとどまった。正直、ほっとした。