6人不明のまま…"知床"観光船沈没事故から1年 ボランティア苦渋の捜索断念 「伝え続ける」家族の決意

「自分の人生も大切にしてほしい…」と桜井さんは伝えます
自分たちが捜索をやり切ることで家族も進むことができる。
5月4日、最後の捜索へ向かいました。
観光船沈没事故の捜索には様々な人が参加しました。
地元の消防署に勤務する中島圭一さん。
当時、救急救命士として乗客の搬送にあたっていました。
知床を楽しみに全国から来た人たち。
捜索を続けるのは、家族の代わりに行方不明者を見つけてあげたいという思いからです。
中島 圭一さん:「ここに住んでいる自分としては知床岬まで行く体力があり、経験もあります。行けるのは自分しかいないと思っています」

家族の代わりに行方不明者を見つけてあげたいという思い
札幌市から参加した遠山朋子さんは5回目の参加です。
毎回、心の中で行方不明者に語りかけながら捜索しているといいます。
遠山 朋子さん:「『来る人がいるから寂しくないからね』と心の中で思いながら」

心の中で行方不明者に語りかけながら捜索…
これまで全国の山々を登ってきた遠山さん。
自分と同じように自然に魅了され、知床にやって来た人々の無念を噛みしめながら歩きます。
遠山 朋子さん:「こんな素敵な景色を見に来たのに、帰れなくなっていまってこんな悲しいことはない」
何度もヒグマに遭遇するなか、捜索隊は知床岬の海岸を約9時間かけ捜索しました。

何度もヒグマに遭遇…過酷な捜索
動物のものとみられる骨や衣類の一部などが見つかりましたが、行方不明者は見つかりませんでした。
知床の漁師 桜井 憲二さん:「何かをしてあげたくても、できることがなくなった。これ以上、何もしてあげられないというのが本音です。つらいことですが帰ってこない家族の分もがんばって、しっかり生きていってほしい」

「しっかり生きてほしい」
元妻と息子の帰りを待ち続けている男性。
捜索隊が力を尽くして2人を探してくれたことが生きる力になっていました。
男性:「『絶対何か見つけてやる」』という気持ちが心の支えになっていました。いま止まったままの時間をいつか進めることができたらと思います」