ドキュメンタリー映画『揺さぶられる正義』が問うマスコミ報道のあり方―“弁護士”から関テレ“報道記者”へ転身した上田大輔監督に舞台裏を直撃
今日は映画「揺さぶられる正義」を監督した、関西テレビ報道記者の上田大輔さんにお越しいただきました。
――上田監督は弁護士であり、そして記者でもありますが、この「揺さぶられっ子症候群」に着目された動機を教えていただけますか。
この「揺さぶり」はあやすような揺さぶりではなく、1秒間3往復という激しい揺さぶりのことを指すんです。一定の症状が出たらそのような揺さぶりがあった、ということになるんです。
この問題に出会った当時、私は乳児の育児中でしたが「イライラしたとしても1秒間3往復の揺さぶりをするかな」という疑問が湧きまして。そこから取材を深めていきました。
――検察側の証人に立った医師の脳の画像の見落としで判決が覆っていくという事実がありました。取材をされる中で、これはどういうことなんだろう、という場面はありましたか。
一定の症状があれば「揺さぶり」だと、今まではみんなそう思ってたんですよね。医師がそういう証言をして、あるいは鑑定をして揺さぶり事件になっていくんですが、一旦医師が鑑定してしまうと、みんな「この人が揺さぶった」という前提で捜査が進んでいくんですよね。
実際にその人がものすごく子どもを可愛がっていて、「そういうことするかな」っていう疑問は、捜査過程で吹っ飛んでいっている。そういう思い込みの怖さはものすごく感じました。
――この話が描いているのは、やはりメディアの報道のあり方ですよね。決めつけて流してはいないか、報道はこうなんだという自分たちで決めたルールに基づいて、それが誰かを傷つけていないか。そこを問う作品のように見えました。
「揺さぶられっ子症候群」の取材をしてたくさんの当事者に会ってきました。「なぜああいう報道になったんですか」「私たちの言い分を全然反映してくれないじゃないですか」ということを皆さんから言われ、そこと向き合わざるを得なくなっていった。自分たちの報道のあり方はどうすればいいかということを問われ続けた取材だったので、その過程をこの映画で見ていただければと思います。
映画「揺さぶられる正義」は10月11日から札幌中央区のシアターキノで公開されます。
また11月上旬には、函館や苫小牧でも公開の予定となっています。