宿泊運営の常識を変える挑戦で地域と未来をつなぐ 「MASSIVE SAPPORO」川村健治さん #BOSSTALK
コロナ禍の苦境 人員削減は考えず、経営改善に注力し高収益体質に転換
――コロナ禍でダメージを受けたと思いますが。
「しばらく苦しくても、必ず回復すると考えました。そのとき、主要メンバーがいなければ、仕事になりません。先輩の経営者、ぼくのことをすごく大切に思ってきてくれる人ほど『リストラして、経営者が鬼にならなければならない局面だ』と助言してくれましたが、言われれば言われるほど、リストラしない気持ちが強まりました。この事業に対する自分の覚悟を問う時間でした」
――人を減らさずに、どのように乗り切りましたか。
「コロナ前、会社は伸びていましたが、すべてが盤石だったわけではなく、脆弱な部分もありました。忙しいときは、忙しさと戦うのが精いっぱい。コロナ禍は改善すべき点をすべて改善できる期間だと位置づけました。例えば、コロナ前の売り上げがピークのときでも、実は3000万円の赤字。コロナが明けて、そのときの売り上げに回復すると、利益が3000万円出ました。業務改善によって同じ売り上げでも6000万円分の価値を生み出せるようになったのです」
――会社にとっては本当に必要な時間にしたのですね。今、力を入れて取り組まれていることは?
「展開エリアはコロナ前は札幌中心でしたが、道内をはじめ全国に広げることによって繁忙期の平準化を狙っています。都心部は今後、競合が激しくなれば飽和状態になり、稼働率も単価も下がります。そうした事態に備え、あまり競合しない地方の展開に力を入れています。無人ホテルであれば宿泊施設の空白地帯など、通常は出店できないエリアにも進出できます」
現場を信じ、すべて任せる「ぼくちゃん、分かんない」経営で社員の士気向上
――日本の課題である労働力不足にも一石を投じるビジネスですね。ボスとして大切にしていることを教えてください。
「民泊業界に身を置いて実感するのは進化のスピードが速く、私のレベルでは、もうついていけません。実際に現場が一番詳しいのです。社内で『ぼくちゃん、分かんない』と言いながら、ノウハウを吸い上げ、混ぜて現場に戻すという役割をしています。社員は社長には頼れず、自分でやるしかないと思っているでしょう」
――北海道での今の事業に関して、未来をどう展望されていますか。
「人気のある北海道は先人の方々が死ぬ気でつくってきました。次世代に良い形でつながなければいけない。来ていただいた外国人旅行者が、おもてなしの北海道を楽しみにしていたのに、期待外れだったら、その感情は消えます。宿泊施設の面から責任を持ちたいなと思います。日本全体の力になりたいと思っています」