ヒグマにかじられ失った左目…命がけで対峙する北海道のハンター それでも共生の道探る“名士”
ライフル銃を置き“箱わな”へ舵切る…20年で100頭以上捕獲
ライフル銃を持ち、スコープをのぞくことも難しくなった原田さんは、箱わなへとかじを切った。
今年7月11日、岩見沢市の郊外に広がる山林にいた。4か所に設置した箱わなの見回りで、この日はヒグマの姿はなかった。前年の同じ時期は約10頭を捕獲したが、今年はまだ2頭。
「クマがかからない。これはこれでいいのです。ウロウロされると地域住民に被害を与えないか心配ですから。人命というのが一番尊い」
原田さんはこの20年でクマを100頭以上、シカを約6000頭駆除してきた。必要以上にとらないのが原田流で、わなの設置先にも強いこだわりがある。
「山奥には設置しない。市街地に近づいてきたクマだけをとる。無駄にとらない。山の中にいたって良いじゃないですか。これが“原田流”です」
この言葉には、彼の「共生」に対する深い思いが凝縮されている。
山奥でのクマの存在を許容し、彼らの自然な生活環境を尊重する一方で、人間の生活圏に侵入してくるクマには迅速に対応する。このバランス感覚こそが「原田流」の核心である。
若い弟子たち 「年寄りが後継者育てる それが1番の近道」
北海道猟友会によると、道内のハンター登録者数は年々減り続けて、ピーク時の1978年に比べると、2023年は4分の1の約5,400人まで減少した。60歳以上が半数近くにのぼる。
原田さんはこれまで2人にハンターとしてのノウハウを包み隠さずに教えてきた。
「もう任せられると思っています。地域を安心させてほしい。それ以上、2人に望むことはありません」
「個体調整で尊い命を奪い、動物には申し訳ないと思っている。被害や人里への出没を一気にゼロにするのは厳しい。でも減らすことはできる。年寄りが後継者を育てる。これが一番の近道」
原田さんは木漏れ日が当たる鳥獣魂碑に手をあわせる。クマと人間の共生は、まだ道半ばだ。
※この記事は北海道ニュースUHBとYahoo!ニュースとの共同連携企画です。ハンターを取り巻く状況を追い、クマとの共生の道を探りました。