【物議醸す上沢直之投手のソフトバンク入り】ポスティングシステムの課題「ファンの納得感考えるべき」…元ホークス取締役の有識者が解説―ファイターズの思惑は?
昨季、ファイターズからポスティングシステムでメジャー挑戦し、今オフにソフトバンクへ移籍した上沢直之投手。国内FA権を取得していない段階でポスティングシステムを利用し、1年でフリーエージェント(FA)となりました。ライバル球団の移籍はファンの間で物議を醸しています。ポスティングシステムに課題はあるのか。福岡ソフトバンクホークス元取締役で現在、桜美林大学の教授である小林至氏に課題を聞きました。
上沢移籍は問題なし「少しでも良い条件に行くのは当然の考え」
球団とファンから後押しされメジャー挑戦し、1年でライバル球団に移籍したことで、一部のプロ野球ファンから批判が出ている上沢投手。しかし、小林氏は「プロ野球選手の寿命は限られています。少しでも良い条件のところに行くのは当然の考え」としつつ、「同じリーグですから、ファイターズファンにとっては、ソフトバンクのプラスは日本ハムのマイナスと考え、がっかりしたのかもしれません」と指摘しました。
ファイターズの思惑にも触れ「去年オフの段階で上沢投手が国内FA権を取るまで1、2シーズン。ポスティングシステムを本人も望んでいるので、事実上のFA。戻ってきてくれれば心情的にうれしいけど、『他球団なら、しょうがない』と交渉のラインを決めていたと思います」と、"想定内"であった可能性があるとしました。
「ルールの再構築は必要」ポスティングシステムの課題とは
ルール上、交渉上は問題のない上沢投手の移籍です。ただ、小林氏は「ファンの納得感を考えたほうがいい」とし、システム再構築の必要性を主張します。
「国内FA権を取るまでの期間に戻ってきた場合は、元の球団に保留権が発生するようにすれば合理性があるかもしれない」
上沢投手のように国内FA権を持っていなかった選手がポスティングシステムで移籍してNPBに復帰した場合、まずは元球団に戻らなければならないシステムを追加するというのが小林氏のアイデア。既に韓国プロ野球にはあるルールです。
上沢は"国内問題" でも佐々木朗希は"国際問題"
感情的な部分で波紋をよんでいる上沢投手の移籍だが、ポスティングシステムの"受け手"となるアメリカにとっては「それは日本国内の問題」と小林氏は言います。
一方、このオフにポスティングシステムを利用した佐々木朗希投手(23)が、ルール改定のキッカケになる可能性があると見ています。
「ポスティングシステムを利用したことは、大事なルールの見直しとなる材料になるはず」
その理由は25歳以下の選手はMLBの労使協定で契約金や年俸の額が制限され球団に支払われる譲渡金も限らるためです。
「MLBの中で"フェア"とは経済合理性で動くこと。能力のある選手を買い叩ける仕組みはおかしいとなるかもしれない。『ロッテはなぜ出すんだ? なぜ今いきたいのか?2年待て大きなビジネスになるじゃないか』と疑問視される可能性は高い」
2026年オフにはMLBの労使協定が見直されます。小林氏は「"ポスティングの在り方"も、球界の中で再燃しそうだ」と予測しました。