祖母の思いを引き継ぎたい 海外CA経験から“お茶業界”に転身 「大森園」大森由美子さん #BOSSTALK
時代の逆風が吹く中、店舗再編し、生き残ろうと決意
――札幌に戻ってきて、どういう仕事をされましたか?
当初は店に立ったり、いろんなテナント店に行って販売の手伝いをしたりです。ラッピングやお掃除などの雑用から経理まで一通り全部しましたね。客室乗務員の仕事は全部(事前に)用意されており、制服を着て限られた時間に働くだけでした。(与えられた)これだけをやれば良いという仕事。今の仕事は自分で操縦しながらトイレ掃除もし、食事も出して下げて、その一方で、飛行機のメンテナンスをして、営業やプロモーションもする―。何でもやらなければならない感じがします。
――どういうきっかけで会社を継いだのですか?
10年から15年ほど前に起きた百貨店の閉店ラッシュや、テナント店の撤退など、業界は時代の流れに飲み込まれました。採算の合わないところは思い切って閉じてコンパクトにして、業界の中で何とか生き残ろうと思いました。10年前に店舗を移したり、規模を小さくしたりして今に至ります。
――店舗を小さくしたときは、社長をされていたのですか?
ちょうど、その(経営を転換する)きっかけに社長に就きました。
――経営者になると見える世界は変わりますか?
客室乗務員のときは「今日もエコノミークラスが満席で、大変だ」と思っていましたが、今は「満席ありがとうございます」―という気持ちで働いています。もう一つ感じるのが物の見え方です。いろいろなところに目を向けないとやっていけないと思います。
お茶をあまり飲まない若い世代に、繊細な香り、味わいを伝える
――今、どういうことに力を入れていますか?
お茶がなかなか飲まれなくなっています。多くの方に本来のお茶の入れ方、お茶の良さを伝えたいと思います。コロナ禍の前までは、小学生向けのお茶のイベントなどを企画・運営し、お茶の教室を小規模で開催し、お茶に親しんでもらえるよう努めていました。感染拡大で開催できない時期がありましたが、今はおうちで急須を使ってお茶を入れて、楽しむ方法も伝えています。最近は飲食店さんから、メニューの一つとしてお茶を使いたいというご相談に応えられるようにしています。
――家でお茶を入れたことない人が本当に増えているそうですね。
大学で担当する授業では初回に、学生さんに「おうちに急須がありますか」と尋ねています。「ある」と手を挙げるのは本当にパラパラです。ただ、急須で入れたお茶を味わうと、「こんなにおいしいとは」と感激することが多く、うれしいです。