虐待の2歳女児"衰弱死"事件から5年 悲劇防ぐ取り組み続く 子どもとの接し方がわからない…親子関係改善するアプローチも
息子の泣き声を聞いた近隣の住民が通報し、児相の職員が自宅を訪れたこともありました。
「精神的に追い込まれる感がすごくつらくて、どこに行っても周りから『うるさい』と言われる。『子どもを産んで、すみません』という感じです」(美咲さん)
1年前からセンターで受け始めたのが、PCITという心理療法です。
おもちゃが置かれた部屋で息子と遊んでいると、マジックミラー越しで様子を見ているセラピストが無線のイヤホンを通じて、美咲さんにアドバイスを送ります。
「『ブロックをくっつけてください』と命令したら喜んでやってくれると思います」(セラピスト)
「このブロックをここの塀のところに黄色のブロックをくっつけてください」(美咲さん)
「素晴らしい『直接的命令』です。うれしそうにすぐやりましたね」(セラピスト)
子どもとの遊びを通して、適切な接し方を学ぶことができ、親子関係の改善や虐待の防止に効果があるとされます。
この日は、適切な指示の伝え方を練習しました。
「ママ、壊さなくてよかったのに」(息子)
「…」(美咲さん)
「『選択的無視』、上手にできています。」(セラピスト)
子どものネガティブな行動にはあえて注目しません。一方、好ましい行動は積極的に注目し、具体的に褒めるなどします。
「すごい!」(美咲さん)
「つけてくれてありがとう」(セラピスト)
「つけてくれてありがとう」(美咲)
「粘り強くやったことも褒めてください」(セラピスト)
「あきらめないで直してすごいね」(美咲さん)
「すごくいいところを評価できて、素晴らしいです」(セラピスト)
こうしたやり取りで、親は子どもの行動の良い面に目を向けることができるといいます。
「支配する怖い親。恐怖で子どもをコントロールするしかないと思っていた。違うやり方を身に着けたことで子どもを人として尊重する関わりができるようになります。お母さんが自信をつける、仲良くなる。日常の困りごとが減る。子どもも成長しくいくのがみられるというのが多いです」(興正こども家庭支援センター 今泉 明子 副センター長)
美咲さんも息子との関係に変化を感じられるようになりました。
「(息子が)私に対して話しかけていいって思えるようになったんだなと思います。話かけることさえなかった、私のことが怖いから。遠慮がなくなった。うれしいなと思うようになりました」(美咲さん)