虐待トラウマ"癒えぬ傷" 日常生活でフラッシュバックも「言いたくない」心の壁や少ない専門家 治療にハードル 新生活不安も
「こんなしんどいなら生きている意味ないなと思ったりして。一日一回は真剣に死ぬことを考えるんです」(ゆうさん)
アルバイトでお金を貯め、大学に進学。
一人暮らしを始めました。
今も料理していると、作った食事を祖母に捨てられた記憶がよみがえってしまいます。
「途中で嫌になって作った料理や食材を捨ててしまって、小さいころされていたことを再演している」(ゆうさん)
支援団体が虐待サバイバー約700人を対象に行った調査では、精神科の受診歴がある人が8割以上にのぼりました。
しかし、大半はトラウマの専門的な治療に結びついていません。
札幌でトラウマ治療を行っている野呂浩史医師。
専門医が少ないほか、保険適用がされない治療は費用が高額になること、さらに患者にも精神的な負担が生じるなど治療へのハードルはいくつもあるといいます。
「長期にわたるフォローが必要で、医療サイドからするとコスト的な面や、対応できるスタッフの育成が国内でも不十分。こちらが虐待に気づいたり、情報があったりしても『先生、その話題は避けてください。眠れないから来たんです』と患者さん自身が虐待の話題を避けることも多いです」(南平岸内科クリニック 野呂浩史院長)
実家とは連絡を断っているため、就職する際に必要な保証人がいません。
「(心が)折れます。『あ、そっか…』みたいな」(ゆうさん)
働くことができるのか心配です。
今の願いは一つです。
「大きく調子を崩さずに平穏な生活が送れるのが一番だなと思います」(ゆうさん)