「いつか親を置いていくとしても、1日でも長く笑顔の日々を」医療的ケアが必要な子と親を支える新施設がオープン_背景に医療的ケア児が利用できる“居場所”不足
5月5日はこどもの日。
医療の発達で救える子どもが増える一方、医療的なケアが欠かせない子も増えています。
そんな子どもと親を支える施設が北海道石狩市に完成しました。
母親になってから熟睡したことはありません。
札幌の運上佳江さん、夜中も2人の娘のケアを行っています。
佳江さんと夫の昌洋さんは重い障がいのある2人の娘、愛夕さんと実來さんを育てています。
食事は家族と同じものをペースト状にして、胃に注入します。
「この子たちにとって母親らしいことをしたいという私の子育ての一つに家族で作った手料理をあげたい」(運上 佳江さん)
医療ケアの新拠点設立を目指して
佳江さんは重い障がいのある子を持つ保護者らでつくる札幌のNPO法人ソルウェイズの代表です。
ソルウェイズは石狩市に医療的なケアが必要な子が宿泊したりデイサービスが受けられる新たな拠点の建設を目指してきました。
「どんな子どもたちもみんなが笑顔になれるような地域の中でかけがえのない存在になれればいい」(運上さん)
医療ケアを行う事業所の深刻な不足
医学の進歩によって、命を救うことができる子どもが増えています。
それにともない、家でも医療的なケアが必要な子も増えていて、札幌だけで300人以上です。
しかし、親が体調を崩したときなどに子どもが過ごせる事業所は不足しています。
2024年12月…佳江さんはあることに心を痛めていました。
本州で医療的ケア児が被害者となり、親が加害者となってしまう事件が起きていたのです。
「悲しい事件が日本で起きてしまったがそのとき必ず言われるのがこういう子たちは『生かされて生きている』とか」
「生かされているんじゃないということを感じてほしい。ひとつの命を、この子たちの人生をどう歩んできているのかを知ってほしい」
長女の愛夕さんは目の動きで自分の感情を伝える練習を家庭や学校で積み重ねてきました。
「そうやって人に伝えなさいって先生たちと一生懸命やっている。きょう先生も来るから私いい顔でやるわって」
この日、佳江さんと愛夕さんは並んでイベントに参加しました。
障がいのある子と親の暮らしを伝えるためです。
「目が覚めて愛夕が母さんもう元気だし治ったよという夢を見る日はまだあります」
「だけど私は一度も娘のことをいやだとか嫌いだと思ったことはない」
「障がいのある娘が大好き、心から愛しているしこの子を育てて後悔はない」
娘からのメッセージ…その目には涙が
愛夕さんも目の動きで書いたメッセージを用意していました。
「来てくれたみんなへまた会おうね。父と母が頑張っているからよろしくお願いします」
気持ちを伝えた愛夕さんの目には涙が光っていました。
「(いつか)母さんを置いて、手の届かないところに行ってしまうことは分かっている。分かっているけど、1日でも長く笑って家で過ごすために、ここを使っていつまでも一緒にいたい。みなさんも応援してください」(運上さん)