札幌刑務所の炊事場に密着 1000人分の食事を作る“受刑者”たち…更生と社会復帰を担う「刑務官」のなり手不足が深刻化 人材確保のための新しい取り組みとは
放送が始まりました。
「刑務所の中の『炊場』という食事を作る工場の副担当をしています。受刑者がいま悩んでることや、受刑者同士の人間関係などを解決するように心がけています」(男性刑務官)
ラジオブースの外では足を止めて聞き入る人の姿も。
「ぜひ、採用試験を受けてほしいと思います」(男性刑務官)
1時間30分に及ぶ生放送が終了しました。出演した感想は。
「緊張したが、言いたいことを言えたと思う。この場所でパンフレットを持ってくれた人がいたので、少しは意味があったのかなと思う」(男性刑務官)
刑務官のなり手不足解消のため行われた、全国的にも珍しい取り組み。人材確保の一手となるのでしょうか。
取材後記
【取材を終えて】
今回の取材を通して、刑務所が抱える受刑者の高齢化という現状と、それに対峙する刑務官の将来像が見えてきました。
札幌刑務所を訪れる前は暗く閉鎖的な雰囲気かと思っていましたが、実際の所内は白を基調として窓が多く、日光が差し込み明るい印象でした。
しかし、全ての窓に鉄格子が取り付けられていて、ここが刑務所であることを思い知らされます。
特に目を引いたのが「機能向上」のための工場でした。
白髪で痩せた高齢の受刑者が取り組んでいたのは「塗り絵」です。
この他にも、タブレットを使って「間違い探し」などの脳トレをしたり、「折り紙」をしたりすることで認知機能の向上を図っています。
また、トレーニング器具を用いて身体機能の向上にも取り組んでいます。
まるでリハビリ施設のようですが、これも刑務作業のひとつです。
洋裁や金属加工など通常の作業が困難になった高齢受刑者向けに、2022年から始まりました。
札幌刑務所に収容されている受刑者の平均年齢は51歳8か月。
60歳以上が2割以上を占めていて、最高齢は85歳です。
高齢化が進む刑務所内で、受刑者に義務付けられた作業を行うための苦肉の策なのです。
2025年からは拘禁刑が導入され、従来の刑務作業が義務ではなくなります。
再犯を防止するための教科指導や更生プログラムなどと、刑務作業を組み合わせて実施できるようになり、個人に応じた処遇に重点が置かれます。
こうした新しい取り組みには人手が必要です。
現場の刑務官は「受刑者個人と向き合えるようになる」と話す一方で、「やらないといけないことも増えるだろう」と不安を口にしていました。
変わり始めた刑務所で、共に働く仲間を求め行ったラジオ放送。
苦悩する刑務官の姿が繁華街「ススキノ」の若者にどう映ったのか。
その効果に期待したいです。
(取材:福岡 百)