潜水士歴30年以上 水中ドローン事業で新たなチャレンジ「大歩」中村徹也さん#BOSSTALK
【潜水事業】港湾の水中工事や水産漁業の海中調査など、潜水業務全般を手掛ける函館の「大歩」が新たに水中ドローン(無人潜水機)を導入し、幅広いニーズに対応している。中村徹也社長にロボットを駆使した今後の事業展開を聞きました。
根室の水産加工場で育ち、潜水士のすばらしさを実感
――潜水士の会社ですね。潜水士はどんな仕事をされていますか?
港は人の手で調査、設計して構造物を作り上げています。海上保安庁の海猿、消防のレスキュー隊、自衛隊も海で活動するのは潜水士です。
――ご自身も潜水士ですね。
現役の潜水士です。資格は国家資格です。
――水中の仕事に興味を持たれた経緯を聞かせてください。
根室市で生まれ、祖父がウニの加工場を経営していました。女工さんがウニの折り詰め作業をし、ウニを取るのが潜水士です。潜ってたくさん取って生計を立てていました。僕らは水洗いしてお駄賃をもらい、潜水士はすごいんだなって思っていました。高校は潜水技術を教える岩手県の高校の水中土木科(当時)に進み、測量とか土木施工など港湾工事の基礎を学びました。深さ10メートルのプールで潜水訓練も行いました。
どんな条件でも仕事を引き受けて努力 その積み重ねが信用に
――高校卒業後は?
縁あって函館の潜水会社に就職しました。港湾の潜水工事だけでなく、海難救助や、レジャーのスクーバダイビングを教えるインストラクター育成の仕事、水産漁業では昆布の種を養殖施設に結びつける作業もありました。
――その後、独立されたきっかけを聞かせてください。
社長ががんで亡くなってその会社は廃業することになりました。(急きょ事業を継承し)自分のマンションを会社事務所にして事業計画を作り、自分が受け取った退職金から給料を払うことになったのです。社員は3人でしたが、事務所に机を置くと、パンツも干せないほどの狭い状態でした。
――信用をどうやって積み上げていきましたか?
漁師さんに「ちょっとホタテの養殖施設を見てきてください」などと頼まれると、どんな条件でも自分のアイディアで(課題の解決を)やれるように心がけました。僕は過去30数年のログブック(潜水日記、日報)に仕事に行く現場や、何時何分から何分間という作業時間、その作業に必要な(水中での呼吸用の)スクーバータンクの本数などのメモを残しています。次に同じ仕事をするときに必要な情報です。仕事を学ぶ一番の近道で、僕もそうやって先輩から教わりました。ログブックで情報を共有すれば、これまでの信用をそのまま引き継ぐことができるわけですよ。(もし)全国の仲間と情報を共有し、潜水作業のバイブルを作れれば、もっと安全に作業できると思います。