【北海道マラソン2026】「支えてくれる方々のために走りたい」――東北福祉大・村山愛美沙、初マラソンでMGC獲得へ
真夏の札幌を舞台に行われる北海道マラソン2026。女子で注目を集める一人が、東北福祉大学4年の村山愛美沙だ。トラック・クロスカントリー・駅伝で実績を積み上げてきた村山が、この夏、初めて42.195kmに挑む。目標はMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権の獲得。学生として北海道マラソンでMGC出場権を獲得すれば、女子学生では2人目の快挙となる。初マラソンへの期待と不安、暑さへの絶対的な自信、そして「自分のためではなく、支えてくれる方々のために走りたい」という思いを、率直な言葉で語ってくれた。
――7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ(網走大会)に比べ、仕上がりはいかがですか。
「ホクレンに比べたら、断然、状態というか動きが良くなってきているというのはあります」
――トラックとロードに対して苦手、得意の意識はありますか。
「ロードに苦手意識はないです。ただ、駅伝になると自分の中で走れた感じがなくて、いつもどこかでもどかしいというか、出し切れた感じがないまま終わっているというのはあります。トラックは目に見えてタイムがはっきり分かる。ロードだと大会によってコースが違うので、タイムを比べられないというか。多分、そこで自分の中で変に意識しちゃっているのかなというのはあります」
「うまくいきすぎた経験」が不安の種

ホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会
村山は今年1月の大阪国際女子マラソンに、30kmまでのペースメーカー的な形で出走していました。フルマラソンに本格挑戦する前の“予習”は、想定以上の感触だったという。
「すごく自分にとって大きくて。全くマラソン練習をしていない中で挑戦させてもらって、思ったよりも自分の中で感覚が良かったです。正直、あのままゴールまで行きたかったというのがあったんですけど、それ以降にアジアクロカン、世界大学クロカンが控えていたので。多分なかったら監督の話を無視してゴールまで行っていたんですけど、その2つが頭の中によぎって、ちょっとケガできないなというのがあったので、30kmでやめました」
その「うまくいきすぎた経験」が、今回はむしろ不安の種になっている。
――今回はマラソン練習を積んできた中で、30kmで同じことを思えるか、それとももっと自信を持って臨めるのか、
「逆に不安が大きいです。初めてだからというのもあるんですけど、怖いもの知らずで楽に30kmをすんなり行けちゃって。それに挑戦する前、監督に『絶対きつくなる』『やめたくなる』といろいろ言われていた中で、楽に走れすぎちゃって。逆にそれを1回目で知っちゃったからこそ、2回目で同じ感覚じゃなかったらどうしよう、という不安の気持ちが強いです」
当初、フルマラソンへの挑戦は大学4年生の3月だった。予定より早く今夏の初マラソンに至った経緯を村山はこう振り返る。
「監督と話していたのは4年生の3月の名古屋ウィメンズマラソンで、フルマラソン挑戦というのが最初の話でした。でも、今年の1月に大阪国際で走らせていただけるチャンスをもらって、自分の中ではイメージしていたものより全然早く、フルマラソンを走ることになって。びっくりというか。この状態で走っていいのかなという気持ちが強いです」
MGCは、オリンピック等の日本代表選考に直結する国内トップレースへの出場権を争う大会。女子学生が初マラソンでその出場権を獲得すれば、北海道マラソンでは史上初となる。
――率直に、このレースはどのような結果、手応えを残したいですか。
「まずは一番の目標であるMGC獲得というのが、この大会での大きな目標です」
――ペースは、どのくらいで考えていますか。
「1km3分27秒から30秒の間で考えています」
「自分のためというよりは、そういう方々のために走った方が頑張れる」

北海道・新得町での練習の様子
――初マラソンという経験は一生に一度。終わった時、どのような感情になりたいですか。
「マラソンに挑戦するにあたって、本当に今まで以上にたくさんの人が自分のために動いてくれているのを実感しています。正直、自分のために走ると言うよりは、その方々への感謝の気持ちを込めて走りたいという思いがすごく強いです。支えてくれる方々がいるからこそ、自分がこうして競技に打ち込めている。それを感じながら走れたらなと思います」
――学生の段階でそこまで感じられる選手は、多くないように思います。
「休める時間に自分のためだけに時間を割いてサポートしてくれる監督やマネージャーがいるからこそ、自分がすごく集中して競技に取り組めています。これが当たり前のことではないですし、そういう方々がいるから頑張れているのもあります。自分が頑張った時に、支えて下さった方々が喜んでいる姿をみて、『頑張ってよかった』と思えることが多くて。自分ひとりじゃないんだなと感じます。自分のために走るというよりは、そういう方々のために走った方が、自分は頑張れるなと感じました」
暑さに不安なし。「逆に暑くなってくれれば」

集中して競技に取り組めているのは「当たり前ではない」と語る
北海道マラソンの最大のカギとなる「暑さ」について、村山にはまったく不安がない。
「暑さ対策という対策は正直もうしていなくて、暑い方が自分は好きなので、逆に暑くなってくれればなというのはあります」
――暑さに強いと感じるエピソードはありますか。
「みんなが『暑い、暑い』って言っても、全然暑く感じないというか。暑いですけど、それが走りやすいって思っちゃって。大学1年生の全日本インカレも、気温が30度超えで湿度が80%ぐらいでした。タイムは全然でしたけど、入賞できたというのがあって。そこから自分も暑さに対しては何も抵抗なく走れているなって思います」
北海道マラソンは、東京2020オリンピックのマラソンで使用されたコースを一部踏襲している。世界のトップランナーが駆けた舞台を走れることも、村山にとって特別な意味を持つ。
――北海道マラソンにはどのような印象がありますか。
「東京オリンピックでもコースとして重なっている部分があるのを知って、世界のトップの方々が走ったコースを自分も走れるのは、すごく良い経験というか、楽しみだなって思います」
――東京オリンピックは見ていましたか。
「はい。同じ地元の服部選手がマラソンで出場していたので、そこは見ていました」
服部勇馬は東京2020オリンピック男子マラソン代表で、村山と同郷の新潟県十日町市出身。トラックから駅伝、マラソンへとキャリアを積み重ねてきた姿は、村山にとっても一つのモデルでもある。
――服部勇馬選手は、陸上をやっている子どもたちにとって憧れの存在ですか。
「そうですね。小さい頃から知っていることと、同じ地元からマラソンで活躍している選手がいるのは、私自身のモチベーションというか、憧れというか。自分もできるんだと走りから勇気をもらったので、そこを目指して頑張りたいなと思います」
最大の目標は2032年ブリスベン

インタビューに応じる村山愛美沙選手
――一人のアスリートとして、最大の目標は何ですか。
「今は2032年のブリスベンオリンピックが最大の目標で、そこで世界で戦うのが自分の目標になっています。まずはこの初マラソンで、そこに一歩足を踏み入れられたらと思っています」
――学生としてMGC出場権を獲得すれば大会史上初となります。新星として陸上界を背負っていく覚悟は生まれますか。
「あまり自分にプレッシャーをかけるのが好きじゃないので、考えないようにはすると思うんですけど、意識はしちゃう気もして。今までそういう経験をしたことがない中で、自分がやれるとしたら、すごくうれしいことだと思うので。そこは楽しみながらチャレンジしていけたらなと思います」
「当たり前を当たり前だと思わない」。支えてくれる人がいることで競技ができていることは決して当たり前ではなく、常に感謝の気持ちを持つことを意識しているという村山愛美沙は42.195kmの先にある大会史上初の快挙、そしてブリスベンへの一歩を見据える。
<放送予定>
「カネカスポーツスペシャル北海道マラソン2026」
8月30日(日) 朝8時25分~(UHB・北海道ローカル)
8月30日(日)朝8時28分~(BSフジ)
<ゲスト・解説>
ハリー杉山(テイクオフ)
増田明美(スポーツジャーナリスト)
渡辺康幸(住友電工陸上競技部監督)








