革新続ける老舗料亭…ベンチャー育ちの4代目が描く"ECサイトや産直旅行"「札樽観光」杉目茂雄さん #BOSSTALK
"ベンチャー企業"のマインド生かす…スタートは店内見学ツアー

コロナ禍ならではの取り組みも
――戻ってからどのように事業を手掛けましたか?
札幌では知られているとはいえ、まだまだ知らない人がたくさんいるなというのは感じていました。
まずは足を運んでもらうきっかけ作りからスタート。杉ノ目の店内ツアーを企画し、無料で見学してもらいました。延べ400人が見学に来てくれました。
お客様一人一人に接客し説明する企画。「中がこんな風になっていたとは知らなかった」「この空間でお料理を食べてみたい」という反応が多かったです。
――コロナ禍ならではの取り組みは?
新型コロナで自宅療養を余儀なくされていた人に限定して、お惣菜を宅配しました。
友人がコロナで自宅療養の中、外に行けず美味しいものが食べられず不満を抱いていました。暖かいご飯と一緒に食べるのがとても大事だと思いました。おかずだけを宅配し、温かいご飯とお味噌汁で食べていただこうと始めました。
多くの人に認知されるにはメディアに取り上げられることが効果的。取材してもらうために考えてやっていました。ベンチャー企業の経験が生きたと思っています。
生産者学べるECサイトや産直旅行…飲食業の先の新業態

大切にしていることは「両極端のことをバランスよくやる」
――杉目さんの新しいことへ挑戦する姿勢。マインドの原点は?
祖父のDNAが強いんじゃないかなと思っています。名前が同じ「しげお」。祖父は「繁雄」、わたしが「茂雄」と漢字は違いますが。
祖父は色々な業態を作り上げた人。世の中から求められていることをすぐに具現化していく人だった。
飲食をやりながらホタルの人工ふ化を北海道で初めて成功させたりも。共感できる部分がありますね。
人が喜ぶこと。場所だったり、食事だったり、雰囲気だったり。どんどん世の中に出していった人だったと思いますね。
――今後の北海道とのかかわりは?
他の土地にはない北海道の魅力を見つけたので、北海道の地の利を生かしたことをやっていきたい。
北海道食材の美味しいものを提供していくのは当たり前。飲食業だけではなく、生産者を学んで買えるちょっと変わったECサイトや生産者に直接会いに行ける産直旅行を考えています。
新業態も生み出したい。北海道食材を使ったグルメバーガーの店や、うちの歴史を紐解き、うちがやるべき業態を見極めたいです。
――BOSSとして目指していることは?
「両極端のことをバランスよくやる」ことを大事にしていきたいです。
歴史を守ること、北海道の食の次の時代をつくることを体現できる人間になりたいと思っています。
先輩の経営者に言われたことがあります。「老舗は革新し続けてこそ老舗だ」と。会社は75年目。経営者は私で4代目。働いている従業員も代替わりしている中で、皆でバトンを渡していくことは、かけがえのない、尊いものと感じます。残すこと、新しい時代を築くこと。両方やらないといけないと思っています。