運航会社"ずさんな安全管理" 国にチェック体制の甘さも 悲劇の責任は…生かされなかった改善報告
なぜ悲劇を防げなかったのか。北海道知床半島沖の観光船沈没事故の背景には、会社のずさんな安全管理と、甘かった国のチェック体制がありました。命を預かる現場で一体何が起こっていたのでしょうか?
2021年、座礁など2度の事故を起こした「KAZU1(カズワン)」。国土交通省の指導を受けた運航会社の「知床遊覧船」は、桂田精一社長名で改善報告書を提出しました。
「これを機に改めて社内に安全最優先の徹底を図り、全従業員がこれを徹底して実行し、安全運航をしてまいります」
社内で船の安全を再確認するため、2021年7月に全体会議を開いたとしています。

船の安全を再確認するために開かれた会議
「安全統括管理者は、不測の事態に際しては航行継続の中止を含む適切な措置を躊躇なく講じるよう明確な指示を与え、安全確保を最優先する意識の定着を図ること」
報告書では桂田社長が務める安全統括管理者が、安全最優先を徹底することが記されています。船の運航基準などを定めた安全管理規程についても再確認したとされていますが、事故後に行われた会見では…。
知床遊覧船 桂田 精一 社長:「海が荒れるようであれば引き返す"条件付き運航"を豊田徳幸船長と打ち合わせ、当時の出航を決めた。(Q:安全管理規程は守っていた?)はい」
安全管理規程では風速8メートル以上、波の高さ1メートル以上になるおそれがある場合は、出航を中止すると定められています。
事故当日は強風波浪注意報が出ていて、波の高さは1.5から3メートルの予報でした。「安全確保を最優先する」という改善報告書は機能していなかったことになります。
一方で、チェックの甘さも浮き彫りになっています。
2021年10月、国が「知床遊覧船」に抜き打ち検査を実施した際の資料です。陸上の運航管理者と船長との連絡方法について…。

2021年10月の抜き打ち検査の資料
「会社の携帯をauからdocomoに変えたことによって繋(つな)がるようになったとのこと」
エリアマップによると、auの携帯電話はコースの大半が圏外になるのに対し、docomoは比較的つながるエリアが広範囲にわたります。