「救命胴衣では不十分…」海水温の低さに有効"救命いかだ"に注目 金銭面・使用法に課題も
「KAZU1」の沈没事故は救命具のあり方にも課題を突き付けました。
水温が低いと救命胴衣では体温を保てないのです。
体が水に浸からない救命具もありますが導入には壁もあります。
14人が死亡した「KAZU1」の沈没事故。
そのうち9人は発見時に救命胴衣を着けていました。
水難学会の斎藤 秀俊 会長はその限界を指摘します。
水難学会 斎藤 秀俊 会長:「今回、海水温は2~3℃。正直言って何もできない。救命胴衣だけでは不十分」
水温が0~5℃の場合15~30分で意識を失い、長時間助けを待つのは難しいといいます。
「KAZU1」には救命胴衣のほか「救命浮器」と呼ばれる板状の救命具が備えられていました。
これにつかまり救助を待つのですが、やはり水温の低さには有効ではありません。

冷たい海に沈むカズワン
そこで注目されているのがこちらです。
八木 隆太郎 キャスター:「これは6人乗りの救命いかだが入ったカプセルです。緊急時にはわずか10秒ほどで膨らみます」
「救命いかだ」は緊急時に海面に投下し膨張する仕組みで、ドーム状で波や風を受けても転覆しにくい構造になっています。
こちらのタイプは6人乗りです。
八木 隆太郎 キャスター:「床には空気が入るようになっていて、冷たい海水が体温を奪わないつくりになっている」
食料や水、医薬品のほか捜索しやすいように目立たせる反射板や信号弾、海水に色を付ける色素なども備えられています。
1998年1月に根室沖で発生した漁船沈没事故では8人が「救命いかだ」で助かったといいます。

救命いかだ
しかし、こんな難しさも。
水難学会 斎藤 秀俊 会長:「訓練されている乗員が使うのが救命いかだ。プロ向けのものを乗客に使ってもらうのは無理がある」
切羽詰まった事故の瞬間、乗客が安全に乗り移れるか懸念があるというのです。
適正に利用するには十分な訓練が必要だと指摘します。
また、道内で小型観光船を運航する会社は、その他にもクリアしなければならない問題があるといいます。
小型観光船の運航会社経営者:「金銭面ではコロナ禍で事業者はみんな大変苦労している。国が助成するなどの方法をとらなければ無理」
6人乗りの「救命いかだ」の価格は50~60万円。
定員65人の「KAZU1」の場合これが11個必要となります。
かさばるため船内に置くスペースが確保しにくいのも課題です。

安全対策の強化が望まれます
カズワンのような沿岸区域を航行する小型船舶の場合、最大搭載人数分の救命胴衣に加えて、板状の救命浮器もしくは救命いかだの備えが必要です。
カズワンは救命浮器を搭載していたとみられますが、背景は救命いかだの価格が救命浮器の5倍ほどになることがあるとみられます。搭載場所の確保のためには座席を減らさないといけないことも背景にあるようです。
国の補助など安全管理の見直しも必要なのではないでしょうか。