【バイアスロン】前田沙理 夫婦が紡ぐ北京五輪の道“言葉が無かったら辞めていたかもしれない”

射撃を行う前田沙理選手
日本バイアスロン連盟は1月16日に北京五輪日本代表選手を発表する予定です。その発表を前に、代表候補の北海道倶知安町出身の前田沙理選手(31)にインタビューしました。
バイアスロンは勾配のあるクロスカントリースキーを滑った後、すぐに50メートル離れた的を狙い射撃する競技。呼吸の乱れを制御し、精密な射撃が求められます。的を外すごとに1分タイムを加算、種目によっては1周150メートルの“ペナルティループ”と呼ばれるコースを滑り直すペナルティーがあるなど「静」と「動」が混在するエンターテインメント性のある競技です。
そのバイアスロンで2大会連続の五輪出場を目指しているのが、倶知安町出身の前田沙理(まえだ・さり)選手です。
「(地元倶知安では)毎年終わりにスキーをやるイベントをやっていた。子供たちとスキーをする中で地域の人の温かさ、エネルギーをもらってこの町で育ってよかったなと思っています」

バイアスロンの前田沙理選手
運動好きで剣道や陸上を行うなど、活発な女の子だった前田選手。スキーが盛んな倶知安で育ち、兄の影響もありスキーを履くのは自然な流れでした。その後はクロスカントリースキーでフィンランドに競技留学。さらに早稲田大学在学時にはインカレ優勝と実績を積み、自衛隊入隊後、バイアスロンに転向しました。
4年前には、念願の平昌五輪出場を果たしますが結果は7・5キロスプリントで49位。15キロでは85位。大会後、心に決めていた引退でしたが、納得できない自分…隠せない悔しさがこみ上げてきました。
「出場はかなったが戦う力が身についていなくて、その場にふさわしくない自分だったのが、すごく悲しかった」
そんな彼女の気持ちを後押ししたのは同じくバイアスロン選手だった、夫・亮さんの言葉でした。
“やりたいなら、辞める理由はないんじゃない?”

クロスカントリースキーを滑る前田沙理選手
「平昌五輪が終わった後の5月に入籍をして、婚約をしていた時には今年で選手は辞めるつもりだと言っていたが、“やりたいなら、辞める理由はないんじゃない?”と言ってくれて、私のやるせない気持ちを汲み取ってくれた。その言葉が無かったら自分の中にやりたい気持ちがあっても辞めていたかもしれない。“辞めますを辞めます”ってお話しさせて頂きました」
気持ちに嘘をつけない妻と、その思いに
真っ直ぐ向き合う夫。亮さんはさらなる行動に出ます。妻・沙理さんを支える為、なんと選手生活にピリオド。そして、コーチ、ワックススタッフとなり、2021年6月から2人で海外遠征を組むなど二人三脚で北京を目指してきました。
「何年後かに振り返った時に何が一番思い出に残っているのかと言うとこの1年なんだろうなと思いますし、この1年間隣で私の目標に向かって頑張ってくれたことはとても大きな出来事になるのかなと思います」
代表発表は1月16日。ここまでワールドカップ23位など、好成績を収めていて選出はほぼ確実。夫という強い味方と共に、4年前とは違う自分で世界に立ち向かいます。
◇夫・前田亮さん
「結果よりも彼女の人生の中で悔いのない五輪になればいいなと思います」
◇前田沙理選手
「ゴールした時にこれまでやってきたこと全部できたよって言えたらいいと思います」