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「上司の証言の信頼性低い」長時間労働で命絶った23歳新人女性看護師の裁判 遺族"教育体制"へ疑問呈す

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入廷する原告団(札幌地裁、2020年9月17日)

 8年前、北海道札幌市の病院に勤務していた当時23歳の新人看護師の女性が、長時間労働などによりうつ病を発症し自殺したのは、病院の安全配慮義務違反があったとして、遺族が病院側を訴えた4回目の裁判が9月17日札幌地裁で行われました。

 原告は病院側が主張する上司の証言の信頼性や看護師の特殊性を認めないことへ疑問を呈しました。

23歳で自ら命を絶った杉本綾さん

 裁判は、3月の予定が新型コロナウイルス感染拡大の影響で半年遅れで行われました。

 この裁判は、北海道札幌市豊平区のKKR札幌医療センターに勤務していた新人看護師の杉本綾さん(当時23)が、長時間労働の末うつ病を発症し自殺したもので、国は2018年11月、責任を認め労災認定。

 母親が安全配慮義務違反があったとして、病院の運営母体の国家公務員共済組合連合会に損害賠償を求めているものです。

 これまでの裁判で病院側は「長時間労働は恒常的ではなく、業務量も特段多くはなかった」などと自殺と業務との因果関係を否定していました。

 4回目の裁判で病院側は、当時の上司の証言などを元に、休憩時間は取得できていて、業務は過重でなかったことや、杉本さんの言動や健康状態の変化に気付かなかったことなどをあげ、病院側の責任を否定するとともに、看護師が医療現場で受ける心理的負荷の特殊性も否定する主張をしました。

 これに対し原告側は、杉本さんの上司である看護師の労災調査時の証言は、安全配慮義務違反の責任を問われる立場にいるため信用性が極めて低いと主張。

 一方で同期の職員や別の病院から来た同僚は客観的な判断が可能だったとし証言の信頼性は高く、長時間労働や体調の異変を口にしていたことなどを改めて指摘しました。

 また医師や看護師といった医療職の新人は、質的に心理的負荷が強く、杉本さんが勤務していた急性期病院も負荷を一層強めていたことを指摘。長時間労働の長短に加え、質的な負担の重さを考慮すべきだと主張しました。

医療現場の実態への理解を訴える杉本綾さんの母

 裁判後、原告の杉本綾さんの母親は、「直属の上司が娘の変化に気がつかなかったというのは一体何を見ていたのか。教育体制に疑問を感じる。残業を自己研さんという言葉ですませてしまう風潮が娘の苦しみをうんでいた」と職場環境へ疑問を口にしたうえで、「急性期病院はナースコールが常に響き、知識も短期間で身につけないといけない。コロナ禍で社会が医療従事者を応援しようという風潮になってきたが、実はその前から大変な思いをして残業を積み重ねていた。裁判官には医療現場の大変さと、新人の心理的負荷を分かってもらいたい」と話しました。

 次回裁判は11月26日に開かれます。